“変化と選択”を支えてくれる「プロ」の存在/ヴァイオリニスト松田理奈さん
2016.9.13 TueSpecial Interview
日本女性一人ひとりの生涯にわたる”美しさを拓く”ー。
オージュアメディアでは、”Beautiful Way”と題し、日本で活躍する今最も輝いている女性をゲストに迎え、お一人おひとりの生き方に迫っていきます。Beautiful Way、それは、自分らしく美しく生きてきた軌跡。自分らしく輝いていく道標。
心の迷いや葛藤から一歩前に踏み出すためにどのようなきっかけがあったのか。自分らしい美しさとは何なのか。美しく生きたいと願うすべての女性に向けてお届けします。
第一弾のゲストは、ヴァイオリニストの松田理奈さん。「自分がこういう道を辿って、こういう場所にいるなんて全く予想していなかった」と語る松田さんは、どのように目の前の壁を乗り越えてきたのか。彼女を支えてきたその道の”プロ”の存在とは。全2回に渡り、松田さんの素顔とその生き方に迫っていきます。
その時その時を乗り切るので精一杯な10年
― まずは、CDデビュー10周年おめでとうございます。節目の1年を迎えた今、最初に出てくる率直な想いを聞かせていただけますか?
松田さん ありがとうございます。そうですね、この10年を振り返った感想はただただ「大変だったなあ」と。
学生の頃は、苦学生をしていたんです。バイトで学費を稼ぐときもあったり、合間を縫って音楽の勉強をしたり…。日本ではソリスト、ドイツでは学生をしつつ教授アシスタントを経て、2011年3月9日に日本へ完全帰国。ちょうど震災の3日前でした。あれから5年になりますね。その後結婚もして、子どもも生まれて。
本当にめまぐるしく環境が移り変わった10年で、当時は私がこういう道を辿って、こういう場所にいるなんて全く予想できていませんでした。
©原地 達浩
― 確固としたイメージがあって、キャリアを歩んで来られたわけではないんですね。
松田さん とんでもないです!本当にその時その時を乗り切るので精一杯な10年でしたし、目の前のことで精一杯なのは、今でも変わりません。毎回毎回、想像していないことが起きて、プレッシャーや不安と戦って、乗り越えて。
でもその場その場で、自分で選択してきているから、あまり後悔していることはないんです。誰かに言われるときっと沢山出てくるんでしょうけど、どちらかというと、「私があの時こう選択したから、今、私はこうあれてよかった」と感じることが多いです。
“スタイル”を取り払って気付けたこと
― この10年間で確立された松田さんなりの「スタイル」のようなものがあれば教えて下さい。
松田さん 逆に10年前は凄くあったんです。コダワリが。まさに自分のスタイルを模索して、もがいて。
そんなある日、日本でずっと教わっていた師匠に「最近、自分のスタイルがわからなくなってしまったんです」って相談をしたら、「何を言ってるんだ?スタイルなんていう言葉は70歳になってから言って(笑)」と、一蹴されてしまって。
当時、いろんなプレッシャーに耐えるために、無意識に自分で型を決めちゃおうとしていたんだと思うんです。でもこの言葉でハッとして。自分のスタイルなんて、若いうちに自分で決めちゃいけないんだと気づかされました。
今は、演奏家のスタイルは聴いてくださっている方が決めるものだと思っています。演奏家が自ら述べるものではなくて、お客さまが演奏を聴いて、この人はこういうスタイルの演奏をするよね、と。
コンサートの本番って、実は演奏しながら瞬間瞬間の「感性」を頼りにいろんなことをやっているんです。今の音の響きはこうだったから、こうしようとか。お客さんの反応はどうだろう、とか。いい音楽を届けるために、自分の感性や感覚がとても大切なので、常に自然体でオープンな気持ちで当日に挑めるように心がけています。
― 自然体だからこそスタイルも変化するんですね。
だから毎年いろんな方から、「10年後が楽しみだ」って10年言われ続けているんだと思います(笑)でも、変化する演奏家っていいじゃないですか。そもそも本当に変化してますし。
その分、私が大切にしているのは、目の前の一つひとつに全力で取り組むことなんです。
自然体で、常に変化をしながら目の前の一つひとつに向き合っていって、70歳か、何歳になるか分からないですけど、「松田さんは、こういうヴァイオリニストだったね。」ってお客さまから言って頂けたら嬉しいですね。今は、それが楽しみでしょうがないんです。
周りで支えてくれる”プロ”の存在
― 不安や迷い、心の葛藤と向き合って、意思決定をする時の「コツ」みたいなものはありますか?
松田さん すぐに、迷っていることのその道の「プロ」に聞くようにしています。
私の場合、音楽の解釈等で悩んでいるとします。いつも考えていますが…(笑)例えば、ブラームスはこの曲をどういう気持ちで書いたのか、作曲家の意図が紐解けなくて、イメージする音が出せない時は、ブラームスが大好きな音楽家にお時間を頂いて、いっぱい話を聞きます。
音楽だけじゃなくて、子育てのことも。多くの先輩演奏家の皆さんが音楽を続けながら子育てをされているので、どうやって精神的な切り替えをされているのか、どうやって練習の時間を確保しているのかなど、子育てのプロである先輩方からたくさん教えて頂いています。
― 松田さんは、かなり緊張をされる方だとお伺いしました。本番前の緊張やプレッシャーとの向き合い方も誰かに相談されたりするんですか?
松田さん 緊張しすぎて本番前に逃げ出したこともあるくらい緊張する方なんです(笑)
実は、昨年は今までより一層強くプレッシャーを感じるようになってしまっていました。本来、演奏家として心の中に「否定語」は少ない方がいいんですが、どうしても「ここは失敗できない」という否定的なイメージが本番で続いてしまって、固くなっていました。
これまで若さと勢いで演奏をしてきた中で、やっと、いろいろなことを「理解した」のが仇になってしまっていたんです。どうやってこの公演が成り立っているのか、どういうスポンサーさまがいらっしゃって、どうして私がステージに立たせてもらえるのか、という裏側を知れば知るほど、プレッシャーを感じてしまいました。
自分ではこの原因がわからなかったので、本当に苦しかったです。
― プレッシャーの原因に気付いて、克服できたきっかけは何だったんですか?
松田さん 「皆が通る道なの。色んなことを知ったからだよ。」という業界の方からの一言が克服のきっかけでした。
これまで沢山の演奏家を見られてきた「演奏家をサポートするプロ」の方々の言葉に凄くホッとして。
「一回みんな怖くなるのよ」っていう本当にちょっとした一言だったんですけど、ここで初めて、自分の緊張やプレッシャーがどこから来ているのかに気付けたんです。
自分が託して頂いている「演奏を届ける」っていう使命みたいなものに改めてフォーカスできるようになって、そこからまた、本番を楽しめるようになりました。これが今年の2月のことなので、本当に最近の話なんです。
一人ひとりにケアを提案する美容師さん
― AujuaMediaをご覧の読者の皆さまに宛てて、ヘアケアに関しても一言お願いします。
松田さん 髪のケアに関しても全く同じ考え方をしていて。ずっと、あるオージュアサロンさんに通わせて頂いているんですが、髪に関して気になったり、悩んだりしていることは、すぐに美容師の方に相談しています。
ヘアケアの分野って、「この商品が良いから、コレを使うと良いですよ!」っていう単純な問題じゃない思うんです。一人ひとり、髪の状態も違えば、美しさに関する捉え方も違いますし。
その中で美容師の方々は、例えば、この方はこの部分が傷んでいるからこう補修しよう、とか。この方はこのスタイルにしてあげると美しさを引き出せる、とか。「一つの正解」のない世界で、一人ひとりにしっかりと提案をされている美容師さんは本当に凄いなと思います。
繰り返しになりますが、悩みや迷いがあったら抱え込みすぎずに、迷っていることの「プロ」に聞いてみて下さい。美容師さんも、他の身の回りのプロの方々もきっと優しく相談に乗って下さるので。